生産性をどのようにして上げるのか。
あらためて、「生産性」とは?
ピーター・F・ドラッガー(「マネジメントの父」と呼ばれる人物で、組織運営やリーダーシップの重要性を広め、多くの企業が成功するための考え方や方法を示した経営学者で)が、2010年『知識労働とサービス労働の生産性』の中で書いていた、生産性向上のための6つのステップは次の6つ。
では、「生産性」とは?単なる効率と思っている人が多いが、効率を追い求めると、結果的に長期的な生産性の向上や競争力の源泉を失うことになる。ここで、ドラッカー言葉をベースに、あらためて今後の日本で本当に必要な「生産性」について考えてみよう。
「生産性向上のための6つのステップ」(『知識労働とサービス労働の生産性』から)
(3)生産性の意味を考える (つまり、仕事の「量」と「質」の問題であると)
これらを、これが書かれた15年後の現在、特に少子高齢化を迎える日本、
そして日本独特の社会背景をふまえて、あらためてみんなで一緒に考えてみよう。
(1) 必要のない仕事をやめる
言い換えると、やらなくてよい仕事をやらない。
何を持ってやらなくてよいかを判断するかというと
事業の目的を果たすために必要か否かをブレイクダウンすればよい。
【やらなくてよい仕事の例】
①ただ、慣習でやっていたこと
②誰も幸せになっていない仕事
③将来に向けて完全に背を向けているもの
(2) 仕事に集中する
それぞれが、自分の役割を果たすことができる「環境」を整えることがマネージャーの役割だ。
【集中するために必要なもの】
①お互いが集中するための支援:逆説的だが、他者を支援しお互いに支援しあう環境が、結果的に全員のパフォーマンスが向上する。
②適度な忙しさ:忙しさはすべて悪のような風潮だが、適度な忙しさは、適度な緊張と集中力、
パフォーマンスの向上、達成した時の幸福感、現在の自分への自己肯定、次への自信、タスクへのやりがい、成長の実感につながる。職場で時間が無駄に余る状況は反対に問題の種になることが多い。
③各々が自他が集中できるためのスイッチを知っている、持っている。
集中の環境にはかなり個人差がある。在宅でも集中できる人、できない人、オフィスでは集中できるひと、できない人、周囲の音、スペースなどなど・・・。
これはひとりひとりの受容器、感覚、作業内容、作業環境が異なるので、「一概に言えるものではない」、「自分と他者が同じではない」ということをわかっている、ということが重要である。マネージャーになると、自分の集中の仕方はもちろん、メンバーのそれも把握し、その環境をアレンジすることが、マネージャーの仕事である。
(3)生産性の意味を考える
生産性と聞くと、単に効率の良さつまり、コスパ、タイパのことだと思う人が多いのではないだろうか。
実は、効率性だけの話ではない。仕事の「量」と「質」の兼ね合いと考える方がよい。
どのような付加価値を生むかという点で最終的な生産性となるからである
例えば、ストレスチェックの設問でも、仕事の「量」と「質」についての回答で、「量」が多いと高ストレス判定や高リスク職場といわれるようになる。
仕事量が多いと確かに「長時間勤務→睡眠不足→心身の不調」のような単純なステップを考えるが、これは程度ものであって、ストレスはそこまで単純なものでもただの悪者でもない。
ストレスチェックで量的負担が高いから仕事量を減らしましょう。などとなっていないとは思うが、
では、何をどのように考えることが、生産性につながるのだろうか?
そこで、もうひとつの仕事の「質」についてもセットで考える必要がある。
この仕事の「質」もストレス指標になっている。あらゆるをストレス要因とするこの制度に疑義もあるがそれはさておき、要は自分の能力やキャパ以上の「質」を求められた時、本人にとってストレスになるということである。つまり、仕事の「質」を求めることが悪いことなのではなく、むしろ生産性の向上(付加価値を有無サービスやプロダクトのためには質の追求は必要、利益の源泉)適性やスキルとのミスマッチが問題なのである。
その対策を誤りもし仕事の量や質を軽減させる対策を行うとするとは、日本の職場から付加価値への追求をあきらめることになる。
つまり、仕事の質の向上と量の安定はセットであり、これを実現するための戦略を考えることがマネージャーの役割である。
(4)継続して学習する
質の向上のために欠かせないのが、この「学習」である。自らが成長すれば、同じタスクであっても簡単に感じる。知識や経験を多く持つことは、体を鍛えると、重かったボールが軽く感じ、投げたいところに投げられるのと同じである。
自分の成長よりもショートカット的な効率を優先すると、自らの成長の機会を逃すことにもなる。
とはいえ必要となるスキルは時代とともに大きく変わる。
未来の自分に持っていて欲しいスキルや経験を今から学び始める勇気を持とう。
(5)他人に教える
他人に教えるためにはその過程で、自分の知識や技術を再確認し、改めて整理する機会となるため、プロセスは「アウトプット学習」として、記憶や理解の定着に効果も。
また、疑問を投げかけられたり、別の視点で物事を考えたりすることで自分だけでは気づけなかった新しいアイデアや視点が得られることがあり、知識やスキルも拡充し柔軟かつ多角的に考えられるようになる。
また、自分のスキルが他者の役に立っている実感から、自己効力感も高まり、自分の仕事に対するモチベーション維持にも繋がります。
そして、知識やスキルが個人に留まらず、他人にも伝わることで、チーム全体が同じレベルのスキルを持つようになり、業務をスムーズに分担でき、組織全体の生産性が向上、また、各自が得意分野をシェアし合うことで、弱点を補完し合うチームの形成にも繋がります。
(6)責任あるパートナとのパートナーシップ
生産性に最終的につながるためには、個人的にはこれがもっとも重要ではないかと感じます。
なぜなら、各自がいくら(1)から(5)でスキルや知識を高めても、連携せずにそれぞれがタスクをこなす職場が生産性が向上するとは思えません。職種にもよりますが全くすべてひとりで完結することなどありません。
お互いがお互いを必要とし、専門性を高めあい、フォローしあえてこそ、質の高い、かつ量もこなすことができる結果、付加価値の高いアウトプットを創出し「生産性が高かった」と言えるのです。
自らを高める努力をひとりひとりが行いつつも、お互いの強みをリスペクトし頼りあえる責任あるパートナーシップを結べる職場をめざしましょう。