あなたの人生の「物語」を語って幸せに


ナラティブに語ることがもたらすメンタルヘルスとキャリアの効用
忙しい日々の中で、私たちは「次に何をするか」に追われ、立ち止まって自分を振り返る時間を忘れがちです。
しかし、これまでの経験を「ナラティブ(物語)」として語ることは、心を整え、これからのキャリアを描くための大切な時間になります。自分の言葉で過去を語ることは、未来を形づくる力にもなるのです。
1. ナラティブ(語り)の力とは?
「ナラティブ」とは、出来事をストーリーとして語ることです。単なる事実の羅列ではなく、自分の経験を「物語」として言葉にすることで、自分自身の理解が深まります。
心理学やキャリア支援の分野では、ナラティブ・アプローチは「心の整理」「自己理解」「新しい意味づけ」をもたらす重要な方法として注目されています。
2. メンタルヘルスへの効果
- 感情の浄化(カタルシス効果)
言葉にすることで、頭の中で渦巻いていた感情が外に出て、心が軽くなります。 - 出来事の再構築
辛い体験も「意味のあるプロセス」として捉え直すことで、自己肯定感を取り戻せます。 - 他者とのつながり
語ることを通じて、共感や支援を得やすくなり、孤立感の軽減につながります。
3. キャリア振り返りへの効果
- 経験の棚卸し
「何をしてきたか」を時系列で語る中で、自分が積み重ねてきた強みや価値観が見えてきます。 - 一貫性の発見
点に見えた経験が線となり、自分らしいキャリアの軌跡を描けるようになります。 - 未来の選択肢を広げる
過去を物語化することで「次にどうしたいか」という未来の方向性が見えやすくなります。
4. 実践方法
- 問いを立てる
例:「これまでで誇りに思う経験は?」「なぜそれが大切だったのか?」 - ストーリーにする
「出来事 → 感情 → 学び → 次の行動」の流れで語ると整理しやすいです。 - 誰かに語る/書き出す
信頼できる相手との対話や、日記・エッセイとして書くことで効果が高まります。 - 振り返りを未来につなげる
「この経験から何を活かしたいか」を言語化し、次のステップに結びつけましょう。
このように、ナラティブに語ることは、心の整理とキャリアの振り返りを同時に進めることができる「二重の効果」を持ちます。
今日からできる一歩は、小さな経験を言葉にしてみること。たとえば、「今日嬉しかったこと」「最近心に残った出来事」を、3分間だけ書いてみる。
それだけでも、あなた自身の物語が少しずつ形を持ち、未来への道筋が見えてきます。
【例えば、佐藤さんのキャリアを振り返るナラティブ】

佐藤さん(40代・男性)
「30歳の頃、私は大手企業を辞めてベンチャーに転職しました。周囲からは『安定を手放すなんて』と心配されましたが、自分の中では挑戦したい気持ちが抑えきれませんでした。実際、失敗もありましたし、生活も苦しかった時期があります。でも、あの時、自分が『挑戦を選んだ』という事実が、今の自分を支えてくれています。
振り返ると、私のキャリアの軸は“新しいことに挑むことで自分を成長させたい”という思いでした。
これまでの選択には一貫性があったのだと気づきました。
今後は、その経験を後輩の育成にも生かしていきたいと思っています。」
【 ポイント:出来事(転職)→感情(不安と挑戦心)→学び(挑戦は自分の軸)→次の行動(後輩育成へ)】
【例えば、山口さん子育てを振り返るナラティブ

山口さん(50代・女性)
「子どもが小学生の頃、私は仕事と家庭の両立に必死で、いつも余裕がありませんでした。宿題を見てあげる時間もなく、イライラしてしまうことも多かったんです。
でも、振り返ってみると、子どもは自分で工夫して学ぶ力を身につけていました。
『完璧な母親でなくても大丈夫。見守ることも立派なサポート』
――そう気づけたのは、今だからこそです。あの時の自分には、もっと『よくやっているよ』と声をかけてあげたい。これからは、同じように悩む親御さんに『大丈夫』と伝える役割を果たしたいです。」
【ポイント:出来事(忙しくて余裕がない育児期)→感情(葛藤と後悔)→学び(見守ることの価値)→次の行動(他の親への支援)】
ナラティブの大きな目的と意義
このおふたりのお話から感じるのは、頑張った自分をまずは、認めてあげること。
その時、精一杯頑張った自分を、褒めてあげることです。
人生に正解があると思い込んでいると、過去の自分の選択を悔やんだり自分を責めたり、今の自分を認められなかったりします。
現在進行形のあなたが、意義ある意味づけをすることで、その過去の記憶や経験が、今のあなたによって、本当に意義のあることにできるのです。
無駄な経験はひとつもありません。そして直接ではなくても、かならず誰かの学びや助け、教訓になっていると考えれば、まったく無意味で無駄なことなど何もありません。
まずは、あなたがあなたの推しになる!
あなたの最大の理解者になってください!
あなたの推しストーリーを、あなたからあなたに聴かせてあげてください。
そして、これからどうありたいのか、何ができたらしあわせを感じるのかをもう1人のあなたに語ってください。

ナラティブは、そんな自分同志の、共感と応援の会話です。
でも、どうしてもネガティブにしか考えられない、この先の希望が見えないなどの場合は無理にポジティブにする必要はありません。
そしてこの作業自体も苦しい時は、自分ひとりで悩まず、家族や知人、カウンセラーに相談することもとても大切なことです。