ストレスへの〝イメージ”で、あなたが変わる

あなたは、ストレスを避ける?それとも気にしない?
自分にとっての〝意味づけ〟が死亡率を高める?
アメリカの研究で、3万人に対して次のふたつの質問がなされました。
質問1「前年、あなたはひどいストレスを経験しましたか?」
質問2「ストレスは健康に害を及ぼすと信じていますか?」
8年後、彼らの生死を調査しました。すると、質問1に対して「はい」と答えた人の死亡リスクは、「いいえ」と答えた人より43パーセントも高くなっていることがわかりました。
ただし、死亡リスクが上がったのは、質問2にも「はい」と答えた人たちでした。
つまり、「ストレスは健康に害を及ぼす」と思い込んでいた人だけ、死亡リスクが高くなったのです。
一方で、質問1に「はい」と答えても、「ストレスは健康に害を及ぼさない」と考えていた人の死亡リスクは、「ストレスをほとんど経験しなかった」人のリスクよりも低くなっていました。
この結果を受け、研究者は、「ストレスは健康に害を及ぼすという思い込みによって1年に2万人以上の人が死期を早めてしまっている」と報告しています。
ストレスホルモンが、敵か味方かはあなた次第
不安やストレスを感じると、脳の「扁桃体」が反応します。扁桃体が反応すると、ドーパミン、アドレナリン、コルチゾールなどのいわゆる「ストレスホルモン」が分泌されます。すると心臓や自律神経などあらゆるところに負担がかかります。長期にストレスホルモンが出続けると免疫力の低下や消化機能の低下、不眠、イライラ、うつ症状など、あらゆる心身疾患を発症する可能性が高くなります。
多くの人は、このような病気の原因となるストレスホルモンの分泌を「悪」であると考え、なるべく避けて生きようとします。たしかに間違ってはいませんが、実はストレスホルモンは人間には必要なのです。
もっとも、偏桃体が反応するのには理由があります。
もともとは危険に対する闘争・逃走反応として、いわば人間が生き延びるための生理的な反応です。
日常生活においても、例えば、あることを成し遂げようとして、多忙な状態が続き、体に負荷がかかっていることがあります。しまし本人に明確な目標がある場合、ストレスホルモンであるアドレナリンが分泌されることによって、より大きなパフォーマンスを発揮することができます。
一方、体への負荷を避けることばかりに意識が向きすぎると、少しの負荷でもマイナスに反応しやすくなります。ストレスを避けてばかりいるとストレス耐性も低くなり、結局、恐れていたとおりになってしまうのです。
また、自分だけ責任や困難から避けようとしていることで人間関係にもマイナスの影響があるかもしれません。つまり、ストレスがあるかないかより、ストレスをどう捉えるかで心身の反応が変わってくるということなのです。
ストレスの祖はストレス知らず?!

ストレス学説を唱えたハンス・セリエという学者がいます。
彼はマウスを過酷な環境下に置く実験をおこない、ストレスというものが存在し、それが心身に悪影響を与えると主張しました。このときから、ストレスは悪者となり、排除されるべきものになりました。
ハンス・セリエは、周囲の人たちから「昼夜、研究に明け暮れている」といわれていたそうです。しかし彼は「自分は人生において少しの仕事もしなかった」と人生を振り返っています。
ハンス・セリエが自分のストレスを認めなかった理由、それは、ストレスは害だと信じてしまえば、その心配から本当に害になってしまうことをわかっていたからでしょう。もしくは「研究は遊び」だという感覚を持つようにしていたのかもしれません。
ストレスの実態を正しく知ることができれば、わたしたちもストレス知らずになれるのかもしれません。
